INTRODUCTION 2021
アストル・ピアソラ & オラシオ・フェレールの金字塔
主人公マリアの数奇な運命、タンゴのたどった道とは・・・。
若き日のピアソラとフェレールの最高傑作が、オリジナルフル編成による 演奏と、この作品では日本人初となる舞台演出で極上のエンターテインメントに。ピアソラ生誕 100 周年のクリスマス、あなたに贈る一大叙事詩!!
『ブエノスアイレスのマリア』について
アストル・ピアソラと詩人のオラシオ・フェレールが組んで作り上げた『オペリータ』(造語で「小さなオペラ」の意)として知られるこの作品。ストーリーは、「田舎から出てきたマリアが、やがて地獄に落ちて死んでしまうが、その影は街をさまよい続け、やがて子を身ごもる。」というものだ。そんなわけの分からない物語でありながら、一度触れると何かグッとくる世界観に、今も世界中の人々がハマっている。
マリアが生んだものは一体なんだったのか。どうやらマリアは、タンゴそのものである、という風に捉えるとこの作品のいろんなことが腑に落ちるようである。
さて、発表当時の1968年、おそらく当時のピアソラが成し得た最高のキャスティングで実現したそのステージは、それまでのピアソラの作曲ノウハウを全て注ぎ込んだ渾身の出来となり、アーティストとしての地位を不動のものにした。編成は歌手(ソリスト)が2人、朗読が1人、楽器が11人、群読という大所帯。
この魅力の詰まった最高傑作を、2021年ピアソラ生誕100周年の最後に、バイオリンの柴田奈穂率いるタンゴケリードが取り上げる。しかも、オリジナルフル編成による、日本人としては初の映像や、世界チャンピオンのダンス演出を加えたエンターテインメントである。日本語の字幕付きも嬉しい。
舞台にはきっと場末のブエノスアイレスの匂いがするだろう。
今、その時がきた
「ブエノスアイレスのマリア」を初めて生で聴いたのは5年前、ブエノスアイレスのコロン劇場だった。一緒に演奏やレコーディングをしているピアニストでピピ・ピアソラ率いるバンドのアレンジなども担当しているニコラス・ゲルシュベルグ氏が、自身が出演している同演目のリハーサルに招待してくれたのをきっかけにギリギリ確保できた7階の客席で本番も聴いたのだが、それは身震いするような体験だったのだ。
その半年後、自分で主宰しているLAST TANGOというバンドで、今回も出演するKaZZma(カズマ)さん、宮沢由美さんの多大なる協力を得てこの作品の抜粋版を小編成で作った。大変な作業の連続だったが、幸せだった。
いつかこの作品をフル編成でやれる日が来たら・・・。しかしなかなか手を出せる作品ではなく、今回コロナ禍における文化庁の支援企画に採択され、実現できることに幸せな気持ちと感謝でいっぱいである。
ドゥエンデの「Ahora que es tu hora(今、お前の時が来た)」という言葉で幕を開けるこの作品。
最高のキャスティングでお送りする、タンゴを愛してやまない私たちの「ブエノスアイレスのマリア」の世界へようこそ。
今まさしくその時が来た!!
柴田奈穂(Tango Querido 代表)